ソニーの業績下方修正にみる「ものづくり」の今

2014年9月17日、ソニーが業績の下方修正を発表しました。新聞や各種メディアでも大きく取り上げられていますが、論調としては、復活を期待するものと、迷走具合や経営ビジョンに疑問を呈するものに分かれている様です。いずれにせよ、ウォークマンやプレイステーションといったヒット商品をを生み出した、かつてのSONYの面影はありません。

業績の下方修正は過去にも何回か行われ、いわば常態化していましたが、今回は、5月の経営方針説明会でスマホを反転攻勢の柱に位置付けた矢先、そのモバイルプロダクトの不振で大幅な下方修正の発表となり、もう少し別の対応ができなかったのかという感があります。

ソニーという会社

まずソニーという会社の事業構成を見ていく事にしましょう。ここ数年の売上高のイメージを大きい順に並べてみます。

売上高
・モバイルプロダクト&コミニュケーション:1兆2,000億円程度
・ホームエンターテイメント&サウンド:1兆円程度
・金融:1兆円程度
・映画&音楽:1兆円程度
・デバイス:8,000億円程度
・ゲーム:7,000億円程度
・イメージングプロダクト&ソリューション:7,000億円程度

一方、営業損益は、どうでしょう。

営業損益
・金融:+1,000億円以上
・映画&音楽:+700億円程度
・デバイス:波があるが良い時は、+400億円程度
・ゲーム:波があるが良い時は、+300億円程度
・モバイルプロダクト&コミニュケーション:悪い時は、-1,000億円超
・ホームエンターテイメント&サウンド:悪い時は、-1,000億円超

金融とコンテンツが優等生で、デバイスとゲームは努力賞、事業規模の大きいモバイルプロダクト&コミニュケーションとホームエンターテイメント&サウンドが長年のスランプあえいでいるといった構図でしょうか。テレビ事業に至っては、10年連続赤字のようです。

ここ数年では、2013年3月期は5期ぶりの最終黒字化を果たしましたが、これはニューヨーク本社ビルやソニーシティ大崎ビルの売却、またソネットを完全子会社によって入手し、同社出資先のエムスリー株やディー・エヌ・エー株などの売却する等によって得られた利益によるもので、本質的な体質改善ではなかったという印象が拭えません。

この状況をどう判断するか?ですが見方が分かれる所でしょう。すなわち、多角化により好調な部門が業績不振部門をカバーしているとみるか、多角化により不調な部門が足を引っ張っているとみるか、それはどの事業に軸足を置くかによって印象も変わってくるでしょう。
こうしてみると多角化というのは、非常に奥が深いものがあります。相関性の低い事業の柱が幾つもあれば、平均化され業績が安定する面もあるでしょうし、逆に相関性の高い事業があれば、相乗効果が期待できます。

参入障壁の低下で挑戦者有利の時代に?

今回の業績下方修正の引き金となったスマートフォンビジネスですが、中国の小米科技(シャオミ)や華為技術(ファーウェイ)などが急激にシェアを伸ばした影響が指摘されています。
特に小米科技(シャオミ)は、創業3年目にして世界5位のメーカーまでに躍進しています。日本において知名度が低い同社ですが、中国国内においては、ハイスペックながら低価格のAndroidベースのスマートフォンで勢力を急拡大しています。
今後は、技術面においても、欧米や日本といった先進国のメーカーと肩を並べる様な強力なライバルが中国などの新興国から何時現れても不思議ではないと認識するべきでしょう。
また、この背景には、GoogleのもたらしたAndroid OSが、従来の世界における携帯電話ビジネスという戦いのルールを根底から変えてしまい、参入障壁が低くなった事があります。この様な流れは、今後も継続していくのではないでしょうか。

「ものづくり」企業にとっての現在

現在は、技術やビジネスのテンポが加速しており、変化への迅速な対応という点では、ソニーの様な大企業にとっては決して有利とは言えない状況下にあります。全方位的な展開は難しいと判断して選択と集中を図るか、不振事業を何とか差別化して競争力を高める方策を継続するか、大変難しい難しい選択を迫られる日が近いのかも知れません。
さて、日本の製造業不振イメージが、また一段と植えつけられてしまった感があり、大変残念な今回のニュースですが、見方を180度かえれば、イノベーションを持ち市場ニーズを的確に捉えて迅速なアクションを起こせた企業は、爆発的な成長を達成しているのも事実です。そして、そのチャンスは、この日本においても等しく存在していると前向きに考えるべきでしょう。

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