米航空宇宙局(NASA)は2014年9月16日(日本時間では17日)、国際宇宙ステーション(ISS)へ宇宙飛行士を輸送する宇宙船の開発企業に、ボーイング社とスペースX社の2社を選んだ事を発表しました。
現在、ISSと地球間の宇宙飛行士輸送は、ロシアのソユーズ宇宙船に完全依存しています。その費用は値上がりし続けており、最近では7,070万ドル(約76億円)に達しているとされています。また政治情勢の影響を受ける可能性もある事などから、米国では、スペースシャトル後継の有人宇宙船の開発を急いでいる背景があります。それにしても有人宇宙船の開発が民間へ委ねられる米国の技術力や先進性は、やはり目を見張るものがあります。
スペースX社の設立者 イーロン・マスク氏
今回選定された民間企業のスペースX社は、イーロン・マスク氏が共同設立者かつCEO兼CTOを務めるベンチャー企業です。イーロン・マスク氏は、ハイテク関連のシリアル・アントレプレナーとして米国では著名な人物です。シリアル・アントレプレナーとは、ベンチャー事業を次々と立ち上げる起業家の事ですが、同氏の経歴は、やはり突出していると言えるでしょう。
1995年
物理学を学ぶためスタンフォード大学の大学院へ進むが、2日で退学し兄弟のキンバル・マスクとともに、オンラインコンテンツ出版ソフトを提供するZip2社を起業する。この会社は後に、コンパック社に買収され、3億700万ドルの現金と、3,400万ドルのストックオプションを手にする。
1999年
オンライン決済サービスのX.com社の共同設立者となる。X.com社は1年後にコンフィニティ社と合併、2001年にPayPal社となる。
2002年
宇宙輸送ロケット等を開発するスペースX社を起業し、CEOならびにCTOに就任する。また電気自動車会社であるテスラモーターズ社に投資する。
2006年
太陽光発電会社ソーラーシティを立ち上げ同社の会長に就任する。
2008年
テスラモーターズ社会長兼CEOに就任する。
いかに米国と言えど、ベンチャー企業の立ち上げに成功する確率は高くありません。イーロン・マスク氏は、異業種間での起業数という観点からも際立った存在と言えるでしょう。なお、2014年7月時点での同氏の資産は100億ドル以上と推定されています。
「重要な事だからやる」という哲学
そんな同氏ですが、リーマンショック時は資金面で行き詰ったり、スペースX社のロケット打ち上げが失敗し続けるなど非常に苦しい時もあった様です。
彼のインタビューや関連書籍から学ぶべき点は、「失敗するリスクが非常に高いが、人々の為になる重要な事だからやる」という姿勢でしょう。「会社をつくる為の起業ではなく、なすべき重要なことの為の起業」という内容の発言もあり、世の中を便利で豊かにする技術というのは、やはり長い目でみると必然的に成長していくと考えられますので、フォーカスする分野とそのタイミングおよび実現する為の技術の三つが成功の鍵という事でしょうか。
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