LTspice入門:Mac版でのSpiceサブサーキットモデルの利用

LTspice Mac版では、Spiceサブサーキットモデルを読み込んでシミュレーションを行えます。

Spiceサブサーキットモデルとは?

Spiceサブサーキットモデルとは、単一の素子モデルではなく回路を含んだモデルの事で、一般的に以下のフォーマットで記述されています。

.SUBCKT [Model Name] [Pin1 Pin2 … PinN]
*[Comment]

.ENDS [Model Name]

代表的なものとしては、オペアンプが挙げられますが、MOS FET等も寄生素子の影響をある程度反映する為にサブサーキットモデルで記述されている事が多いので注意が必要です。この記事では、ICメーカーが提供しているSpiceサブサーキットモデルを例に、その利用方法を紹介します。また勿論、Spiceの知識が豊富であれば、自分でSpiceサブサーキットモデルを記述した後、同様の手順でシミュレーションに利用する事も可能です。

Spiceサブサーキットモデルの入手

製品によっては、各メーカーからSpiceサブサーキットモデルが提供されています。ここでは、International Rectifier(Infineon)のNMOS FET製品、IRFML8244を例に作業を進めて行きます。

(IR/Infineon: IRFML8244 Data Sheet)
irfml8244_datasheet_1

International Rectifier(Infineon)社の製品ページでは、Spiceサブサーキットモデルが配布されています。

Inter National Rectifier(Infineon):IRFML8244
IRFML8244_hp_1

ダウンロードしたファイルの内容です。テキストファイルですが、拡張子が.spiとなっています。

(Spice Sub-circuit file)
IRFML8244_spi_1

前述のSpiceサブサーキットモデルの書式で記述されている事を確認します。またピンの順番(定義)が重要なので、必ず確認しておきます。

シンボルの作成

piceサブサーキットモデルを使用するには、まず対応する回路図シンボルを用意する必要があります。シンボルの作成方法は、記事「Mac版シンボル作例〜既存シンボルから作成」、記事「Mac版シンボル作例〜新規作成」で、詳しく説明していますので、そちらも参考にしてみて下さい。

ここでは、LTspiceに予めインストールされているNMOS FETのシンボルを利用して、Spiceサブサーキットモデル用のシンボルを準備していきます。

メニューバーの”File”→”Open…”を選びます。

(File→Open)
sckt_mos_mac_1

ファイルを開くメニューが表示されます。この例では、

/Users/User_Name/Library/Application Support/LTspice/lib/sym

にある、nmos.asyを選択しています。

(Open)
sckt_mos_mac_2

NMOSのシンボル形状です。

(nmos.asy)
sckt_mos_mac_3

開いたシンボルファイルを別名で保存します。”File”→”Save As”を選択します。

(File→Save As)
sckt_mos_mac_4

任意の名前をつけて保存します。この例では、irfml8244.asyとして保存しています。

(Save As)
sckt_mos_mac_5

この例では、NMOS FETのシンボル形状は、元のままにして、必要な設定だけ変更していきます。”Right Click”→”View”→”Attribute Table”を選択します。

(R Click→View→Atribute Table)
sckt_mos_mac_6

“Attributes Editor”が起動します。

(Attribute Editor)
sckt_mos_mac_7

オリジナルの内容を次の様に変更します。
Prefix: X
Value: irfml8244pbf

(Attribute Editor: Settings)
sckt_mos_mac_8

Valueの値は、Spiceサブサーキットモデルの[Model Name]と合致させておく必要があるので注意して下さい。

次に、ピン・オーダー(ピン順)がシンボルとSpiceサブサーキットモデルの定義が合致しているか確認します。

(Symbol)
sckt_mos_mac_9

ピンの部分を右クリックすると設定が確認できます。Netlist Orderと、

.SUBCKT [Model Name] [Pin1 Pin2 … PinN]

のPin1…の順番があっている必要があります。サブサーキット定義側はピン名ではなく、記述されている順番である事に注意して下さい。

(Edit Pin/Port Properties)
sckt_mos_mac_10

1番からN番まで全て合致してるか、ピンの数が合っているかを確認します。
以上の作業が終了したら、保存しておきます。

回路図での設定

前項までの作業で準備したシンボルとSpiceサブサーキットモデルを利用してシミュレーションを行ってみましょう。回路図を新規作成し、シンボルを配置します。

(File→New→New Schematic)
sckt_mos_mac_11

ここでは、テストファイル名を”test_irfml8244″として保存しました。

(Save As)
sckt_mos_mac_12

“Right Click”→”Draft”→”Component”を選択します。

(R Click→Draft→Component)
sckt_mos_mac_13

準備しておいたシンボルファイルを選択します。

(Component Symbol)
sckt_mos_mac_14

テスト回路図例です。

(Test Circuit)
sckt_mos_mac_15

.lib [Spice Sub-circuit File Name]
or
.include [Spice Sub-circuit File Name]

を記述する必要があります。回路図と同じフォルダにSpiceサブサーキットモデルのファイルがある場合は、パスを省略できます。

(Simulation Result)
sckt_mos_mac_16

回路図例のシミュレーション波形です。

まとめ

以上、Spiceサブサーキットモデルの利用法ですが、その手順をまとめると次の様になります。

(1)Spiceサブサーキットモデルの準備
メーカーから入手したり、自分で作成したりして準備しておきます。

(2)対応するシンボルの作成
LTspiceの”Value” = Spiceサブサーキットモデルの[Model Name]
LTspiceの”Netlist Order” = Spiceサブサーキットモデルの[Pin1 … PinN]順
以上がきっちり合致している事が必要です。

(3)シミュレーション回路の設定
Spiceサブサーキットモデルの定義ファイルを、.libあるいは、.includeコマンドで読み込みます。ファイルのパスに注意して下さい。

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